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2022-07-30 17:08:00
改正民法による相続登記の所有者不明土地関連法について

 今回は所有者がわからない不動産について法律の扱いが変わる話をご紹介したいと思います。

改正民法施行は再来年 4 月、相続登記の義務化は令和 6 年4月からになります。

 

 (所有者不明土地関連法の改正について )

 

 2021年の通常国会で、所有者不明土地問題に関連する法律の改正がなされました。具

体的には、不動産登記法、民法(物権法・相続法)を中心にして、関係する20以上の

法律が改正され、また、土地を国に帰属させるための特別法も制定されました。

 

所有者不明土地とは、不動産登記簿、住民票、戸籍、法人登記簿等により相当な努力

を払い必要な調査を尽くしても、所有者が誰か、その氏名(自然人)又は名称(法人)

を特定することができない土地(所有者の特定不能の場合)、及び、所有者が誰かを特定

することはできても、その所在を知ることができない土地(所有者の所在不明の場合)

をいうとされています。

 

特に沖縄においては、沖縄戦において、多くの住民が戦闘に巻き込まれ、尊い人命や貴重な

財産が失われました。また沖縄は焦土と化し、砲撃や基地建設により地形は変容し、原状

確認が不可能な程に破壊され、そのうえ、土地の所有者を証する書類である公図・公簿、

土地台帳等も焼失してしまいました。

 

終戦後、米軍は、占領政策を遂行するうえで土地所有権を中心とする公図、公簿類を早急に

再製する必要に迫られたことから、公有地及び私有地の土地所有権を確定するための土地

所有権認定作業(1946年~1951年)が行われました。

 

この所有権認定作業時に、何らかの事情により所有者から申請のなかった土地、申請は

されたが所有権証明書の受領がなかった土地、所有権証明書を受領したが土地登記所への

登記申請がなされなかった土地が所有者不明土地となり現在に至っています。

 

さらに、沖縄県内においても相続登記がなされないまま、相続が繰り返されることにより

所有者不明土地が年々増加しており社会的な損失となっております。

 

☆所有者不明土地関連法のポイントの一つに相続登記の義務化があります。

 

  相続開始(被相続人の死亡)時から3年以内に相続登記をしないと過料の制裁がな

されることとなったので、注意しなければなりません。

なお、「過料」とは、法令違反行為に対して課される金銭罰であるが、刑罰である

「罰金」や「科料」とは異なるものです。

  

但し、救済措置もありまして、以下にご紹介します。

 

相続人申告登記の新設 

 

(1)意義

 

 登記を申請する者の負担を軽減するため、相続人からの簡易な申出による氏名・住

所のみの報告的な登記を新設し、相続が開始したこと及び申請人が法定相続人である

ことを申告することができることとされました。

 

 その結果、相続開始後は、従来からある①法定相続登記と②遺産分割登記のほかに、

新たに③相続人申告登記(共有持分割合についての記載がなく、対抗要件とはならな

いもの)が加わることになりました。

 

(2)内容【不動産登記法第76条の3】

 

 ① 前記1の相続登記を申請する義務を負う者は、登記官に対し、所有権の登記名義

人について相続が開始したことと、自らが当該所有権の登記名義人の相続人である

ことを申し出ることができるとあります。

 

 ② 前記1の期間内にこの申出をした者は、前記1に規定する相続登記を申請する義

務を履行したものとみなします。

 

 ③ ①の規定による申出をした者は、その後、遺産分割によって所有権を取得したと

きは、その遺産の分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければな

らなりません。

 

(3)ポイント

 

① 相続登記が義務化されたことに対する負担の軽減策となります。

 

② この登記は「報告的な登記」であり「権利の登記」ではないため、対抗要件には

なりません。(※対抗要件とは、権利変動の効果等を第三者に主張するための要件であ

る。対抗要件を得るためには、前記1の相続登記等をする必要がある。)

 

③ また、登記の申請に際して提出する資料も、「共有持分の割合」についてのもの

までは要求されていません。

具体的には、単に申出人が法定相続人の一人であることが分かる限度での戸籍謄抄本を

提供すればよいです。

 

たとえば、配偶者については現在の戸籍謄抄本のみで足り、子については被相続人

である親の氏名が記載されている子の現在の戸籍謄抄本のみで足りるとされています。

 

④ この報告的な登記をした後で遺産分割により所有権を取得したときは、それから

3年以内に前記1の相続登記を行う義務があります。

 

以上令和6年の4月からは、相続登記の扱いが変わりますので、注意が必要ですね。

 

今回も最後までお読みいただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。